恋愛

好かれるにおいと嫌われるにおい!? いったい何が違うのか?

2017年03月20日
nioi

においを感じる「嗅覚」は不思議な感覚である。客観的な評価が難しいにもかかわらず、強烈に感情を刺激するという性質があり、においの好き嫌いは個人差が非常に大きい。人を好きになる感情もにおいによって決められるとさえ言われている。今回は、そんなにおいの好き嫌いと、恋愛におけるにおいの役割を科学的に解明してみよう。

好きなにおい・嫌いなにおいはどう決まる?

smell

五感の多くは先天的に好き嫌いが決まっている

人を踏めた動物が持っている「五感」は、危険・安全を判断する本能的な感情や反応を引き起こす刺激になることが多い。例えば、触覚による「痛み」「熱さ」、聴覚による「大きな音」は危険なものを連想させ、多くの人が嫌な感情を抱くため、その刺激から逃げようとする。

においに関しても、「嫌なにおい=危険なにおい」という概念はあり、ネズミが猫のにおいを察知して逃げるように、動物の場合は本能で決まっている部分は多い。しかし、犬や猫は飼い主のにおいをかぎ分けることができ、そのにおいを「安心できる好きなにおい」と認知する。これは生まれ持ってにおいの好き嫌いが決まっていなく、生まれた後の体験をもとににおいの好き嫌いを決めることがあるいう証拠である。

人は生まれてからにおいの好き嫌いが決まる?

人の好きなにおい・嫌いなにおいに関しては、どうやら生まれた後の体験から学習されることが多いという。
2歳児を対象とした、「バラ」のにおいと「大便」のにおいのどちらを好むかという心理実験では、幼児の半数が大便のにおいの方がいいにおいだと答えている。また、日本人とドイツ人を対象にしたにおいの研究では、鰹節やほうじ茶の香りを日本人の多くは好むのに対し、ドイツ人は「非常に不快」なにおいとして感じるという結果が見られた。これらの結果は、生まれた当初にはにおいの好みに偏りがないが、生まれた後の環境や体験を通してにおいの好みが変わる可能性を示唆している。

また、においは味につられるという実験もある。例えば、初めて嗅ぐにおいは、甘いショ糖を食べながら嗅ぐと甘いにおいとして認識され、クエン酸の酸っぱい味を味わいながら嗅ぐと酸っぱいにおいと感じるという傾向があることも実験によってわかっている。この結果も、においそのものにイメージがあるのではなく、体験とつながってにおいのイメージが付く可能性が高いことを示している。

つまり、においには本能的な好き嫌いがあるというよりも、生活するうえでの経験をもとにしてイメージが決まり、そのイメージのもとで好き嫌いが決まっている可能性が高いのである。

異性の好みにおけるにおいは本能?

silhouette of two lovers hold hands together. Isolated on white background

一方で、もともと好き嫌いが決まっているにおいがあるという。それが、異性に対して恋愛感情を決めるにおいである。

恋愛とにおいの関係に必要不可欠 MHCとは?

恋愛とにおいの関係を説明するにあたり、基礎知識として「MHC」について簡単に知っておいてほしい。MHCは「主要組織適合遺伝子複合体」という難しい名前のたんぱく質だ。このMHCは免疫細胞の表面にあって、異物を認識するためのたんぱく質で、MHCが異物として認識したものに対して免疫細胞は攻撃を仕掛ける。MHCには224の遺伝子が含まれていて、親兄弟ではMHCに含まれる遺伝子は近くなる。MHCに含まれる遺伝子が多様であればあるほど、異物を認識できる能力が高まり、細菌やウイルスなど未知の異物が体に入ってくるのを防ぐことができる丈夫な体を作ることができるのである。

マウスはMHCを嗅ぎ分け、自分のMHCと異なる相手を選んでいる

このMHCがにおいの好き嫌いに影響しているという。
まず、マウスの実験によって、MHCがにおいとして嗅ぎ分けられるということが分かった。マウスをY字型の迷路の端に置き、片方のゴールには餌、もう片方には何も置かず、それぞれのゴールから異なるにおいを送り込み、においを識別させるという実験を行った。すると、マウスはたった1つのMHC遺伝子が違うマウスの尿のにおいをかぎ分けて、餌のあるゴールにたどり着く能力を持っていることが判明した。

また、さまざまな系統のマウスを一緒のケージで飼っていると、異なる系統のマウス同士の方が、近い系統同士に比べてつがいになりやすいという傾向が確認された。マウスはMHCの違いを嗅覚で感じ取り、できるだけ自分のMHCと異なるマウスをパートナーとして選んでいる可能性があるのである。

女性もMHCが遠い異性に惹かれる

マウスで起きたようなことが人でも確かめられている。スイスの学生を対象とした実験では、数人の男子学生に何日間か同じTシャツを着てもらい、そのTシャツのにおいを複数の女子学生に嗅いでもらうという調査を開始。すると、自分のMHCと遺伝的に遠いMHCを持つ男子学生が着ていたTシャツを、いいにおいだと感じると回答した女子学生が多かったという。潜在的にMHCが遠い異性のにおいを好ましいと感じている証拠である。そして、この実験にはもう一つ面白い結果があった。ピルを飲んでいると、この結果が真逆になるというのだ。ピルを飲んだ時は体のホルモン状態が妊娠時と同じように変化するが、それがにおいの好みの変化にもつながっている。もしかすると、親族などMHCが近い人を嗅ぎ分け、遺伝的に近い者同士で安心して出産をするための本能なのかもしれない。

また、少数民族の調査では、カップルになった人同士のMHCは、その民族間のMHCの平均的な違いに比べて大きな違いを持つという結果も出ている。これらの実験や調査の結果からは、MHCの多様性を守って丈夫な子どもを産むために、MHCが大きく違う異性のにおいを好ましいと感じていると考えらる。つまり、恋愛におけるいいにおいというのは、生まれたときからすでに決まっている可能性があるのである。また、思春期の娘に、MHCが近い父親のにおいが嫌われるのも、本能的に仕方のないことなのかもしれない。

MHCが近いカップルは、女性の浮気に要注意

Couple in Love

さて、このMHCの違いによるにおいの好みは、女性に顕著であるという報告もある。
それが、交際中のカップルに対するアンケートで分かってきた。お互いMHCが近いカップルの女性は、MHCが遠い同士のカップルに比べて、以下のような傾向が認められた。
・相手への性的関心が低い
・浮気をしやすい
・別の男性に惹かれやすい
特に、生理周期の中で妊娠しやすい時期にその傾向は高まるようである。これも強い子どもを残すためだと考えれば納得のいく結果である。一方で、男性は女性とのMHCの近さによる浮気度が変わらないという結果に。MHCが近い同志のカップルや夫婦では、男性は女性の浮気に注意が必要かもしれない。MHCは検査可能になってきており、今後相性診断のためにMHCを調べることが一般的になる可能性もある。

好かれるにおい・嫌われるにおいは産まれた後の環境や体験を通して決められる一方、異性のにおいに関する好みは産まれたときから決まっている可能性が高いようだ。まだまだ謎の多いにおいや嗅覚だが、今後の科学の進歩によって、好きな相手の好みに合うよう、MHC毎の香水が開発されるなんて日も遠くないのかもしれない。

参考/興奮する匂い 食欲をそそる匂い ~遺伝子が解き明かす匂いの最前線  新村 芳人 技術評論社
参考/ニオイの不思議—ヒトへ与える影響 赤壁 善彦 フレングランスジャーナル社

 

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